ヴァザーリコード!
2010年 01月 29日
イタリアの科学者達が、2月上旬にもルネサンスの巨匠レナルド・ダ・ヴィンチの遺体検分を目的としたDNA鑑定や炭素年代測定などの実施をフランス政府に要請する事になったそうです。
もちろん申請してから許可を得るまでには色々と法的手続きがるようで、政府から却下されればそれまでなんでしょうけど・・・。
レオナルドのお墓はフランス・アンボワーズの「聖フロランタン教会」にあるそうですが、もっともここに埋葬されている遺骨も本物か偽物かで論争が絶えないようです。
考古学等もそうなのかもしれませんが、どちらにせよお墓の中で安らかに眠っているのに研究目的で掘り起こされるとは、「天才」といわれる者の宿命とはいえ個人的には少しかわいそうな気もします。
もっとも人類の歴史はそのような発掘調査により解明されてきた部分が多々あるのも事実なんでしょうけどね。
画像はイタリアのヴェッキオ宮殿!
現在はフィレンツェ市庁舎としても使用されています。
1504年にレオナルドはフィレンツェ共和国からの依頼でこの宮殿の大会議室の壁面に「アンギアーリの戦い」を描き始め、レオナルドが制作する壁の反対側の壁ではミケランジェロが「カッシーナの戦い」の制作を手がけていました。
ルネサンス芸術の双璧であるこの二人が同時期に作品を手がけたのはこの時だけなのですが、ミケランジェロは彩色段階に入る前にローマへ呼び戻された為に「カッシーナの戦い」は未完となり、一方レオナルドが油彩で制作した「アンギアーリの戦い」も完成することなく未完となりました。
画像はバロックの巨匠・ルーベンスが残した「アンギアーリの戦い」の模写です。
結局未完で終わった2枚の作品は現存してなく、ヴェッキオ宮殿の大会議室の壁面には、その後に他の作家の手により作品が描かれる事となりました。
ところが近年、イタリアの美術史家セラチーニ教授の調査により壁面に描かれたジョルジョ・ヴァザーリ作「マルチャーノ・デッラ・キアーナの戦い」の中で描かれてる兵士の1人が掲げる軍旗に「Cerca trova(探せ、さすれば見つかる)」と書かれているのが発見されました。
ヴァザーリといえば16世紀のイタリアの画家で、「芸術家列伝」という本を出版した事でもよく知られています。
この本にレオナルド、ミケランジョエロ、ラファエロ(ルネサンス三大巨匠)の事などが事細かく書かれていたことにより今日まで彼らの様な偉人が語り継がれる事になったわけです。
セラチーニ教授の理論は「ヴァザーリが尊敬する師ダ・ヴィンチの作品を傷つける筈がない」といものだそうで、イタリア文化庁やフィレンツェ市議会に許可を得て宮殿の壁面をX線調査したところ、かつてレオナルドが「アンギアーリの戦い」を描いていたと言われる壁面はヴァザーリの手によりもう一つ壁が作られ二重構造になっていたそうです。
2つの壁の間には1~3cm程の空洞があるそうで、レオナルドが途中まで描いていた「アンギアーリの戦い」を保護するには十分な空間だという事がわかりました。
現在さらなる調査が行われているので今後の展開が楽しみです!
尊敬するレオナルドの作品を壊すことなく新たに空間を設け壁を作り、その壁に描いた作品の中にメッセージを残すとは・・・。
そんなヴァザーリもまたレオナルド同様に偉大な芸術家ですよね!
なんだかこのような調査にはロマン(死語かな?)を感じます。
by peacebranch
| 2010-01-29 19:29