人気ブログランキング | 話題のタグを見る

二艘の船!

二艘の船!_e0164964_902071.jpg

僕と一枝先生のかつての師、保田義孝先生が1997年に制作した作品。
初めて保田先生のアトリエに行った10数年前、アトリエに展示されてました。

板張りした (1000×803mm)サイズの画用紙に描かれたこちらの作品、数年前に銀座の某画廊で開催した個展の際、通りに面したショーウィンドウに展示されてました。

個展開催中のある日、二人組のサラリーマン風の方がショーウィンドウ前に立ちこの作品をまじまじと観賞し、その後何も語る事なく涙を流しながら画廊に入ってこられたそうです。

多くの人が写実画を『上手い・下手』という物差しだけで観賞しがちです。

写実的な絵を前にし、真っ先に「スゴイ!上手い!写真みたい!」という感想が出る所以も少なからずそこにあるように思えます。

古くからの"保田ファン"の中には理解されてる方もいらっしゃると思うのですが、保田先生は『時間の堆積』という哲学を持ち作品を描いてきました。

この"二艘の漁船"の絵に関しても、『かつて漁の為に海原に出ていた漁船、時が流れ一線を退き陸に引き上げられ、そしてかつて自らの活躍の場であったが再び行く事のない海原を見つめながら時の堆積と共に朽ちて行く』という事を、例えば会社の為にがむしゃらに生きて来て、やがて子供も巣立ち自らも定年を迎え一線をしりぞいた1人の人間が歩んで来た半生をオーバーラップさせた意味合いも込められています。

保田先生いわく、おそらくショーウィンドウに展示されてたこの作品を観て涙を流したその方は、この作品に込めた哲学的な部分、つまり"上手い・下手"という表面的な部分だけでなく内面までをも観てくれたからこそ感慨深いものがあり涙を流してくれたのではと思ったそうです。

そして、たとえ100人の人が観て表面的な部分だけしか観てもらえなかったり批判的な事を言われたとしても、その中の1人でもこのような方がいれば自分の存在意義を感じ嬉しく思うと保田先生はよく語ってました。

絵には人生が出るという深い言葉がありますが、これは描き手だけでなく観賞する側にも言える事だと僕は思っています。

自分の作品を観て下さった方が色々と語る事なくただ黙って涙を流して下さるような、そんな作品をいつか描く事が今の自分の目標のひとつでもあります。

昨年の11月に開催したアトリエピースブランチの展覧会にお越し下さいました。

大分県佐伯市という地方にアトリエピースブランチという色鉛筆画教室が出来、そして今日に至るまでたくさんの生徒さんが入って下さり色鉛筆画と出会えた事、何より油彩画を描く僕、日本画を描く一枝先生も、もともとは保田先生と出会い色鉛筆画と出会った事がきっかけで今があります。

僕はやり残してる事がまだまだたくさんあります。
感謝の気持ちで日々精進、そしてひとつひとつ実践し実現していく所存です。


最後まで読んで頂きありがとう感謝いたします!
by peacebranch | 2013-09-21 10:16

非常勤講師 カズの日記


by peacebranch
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31